ノリで完全撤退しかけるぐらいのダメージぶりだったので、ここは落ち着いてクールにいこうぜ!っていうところで、某ちょさんから「パーロベかけよ^^^^^^」って昔脅されてたのを思い出して&携帯に途中まで書いたやつがあったので挑んでみたんですがやっぱりオチがみつからなかったよ!なんだよこの時間ねむてえよ!という気持ちを込めて晒してみる。完全に後半力尽きてるけどキニシナイ!
誰かオチをください!
あ、こめんとれすは明日!
ぱらりと、頁をめくる音。定期的に静かな部屋に響いては、消えていく。
手持ち無沙汰に始めた読書は、なかなかどうして自分に合うようで、紙面に刻まれたインクを目で追えば、待つばかりの退屈な時間はするすると速やかに過ぎていく。
――部屋の主が帰ってきたことにも気付かないほどに。
「……随分夢中みたいで」
位置でいうなら右斜め上。ソファに座して低くなった頭の上に声がかかる。
それも少し、機嫌の悪そうな。
『お帰り、ロベルト』
本から目を上げ、こちらを見下ろしている顔へと向ける。
少しだけ不機嫌は拭えただろうか。頷く様子をみて、再び目を本へと向ける。
…。
……。
ぽす、と膝の上に何かが乗った。手の平に乗った本の下から覗くのは、見慣れた金糸。
触れたその頭が少しだけ熱を持っていることには、気付かないふりをしておく。
『どうかしたかね?』
目線を本に注いだまま、尋ねる。
「…いや、特に意味はない」
ぱたん、と渇いた音とともに、赤い背表紙が閉じる。
珍しく言い淀む仕草が気にかかり、本をソファに預けることで空いた手を、軽くその背に添えた。
「…、他のアームメイトがどうか知らないんだけど、…あんたはどっか行きたくなったりしないの?」
しばらくして、ぽつり、とつぶやく声。
緩く口元が笑んでしまう。背を向ける相手に気付かれないように、声には乗せないよう気をつけて、ぽんぽん、とその背を叩く。
『行きたいところには大抵行っているとも。お前の行動範囲以外で、と聞きたいのかね』
「…うん」
『特には興味がないな』
「本当に?」
問いかけはすぐに返ってくるのに、こちらを向こうとはしない。背を撫でていた手をおろし、こちらを向かない顔へと伸ばす。目元へ手をかけて軽く引けば、容易く身体が上を向いた。
両目を塞ぐ形で覆った手のひらに、冷たさを覚える。濡れた後に風が当たって、冷えたような。ゆっくりと手のひらの温度を上げて、そのままにしておこう。
『――契約が満たされた時には湧くかもしれないがね。
今のところその予定もなさそうだし、万一満たされたとして、何も変わらないだろう、とは思うが』
「…。その契約って、俺としたんだよな?記憶にないけど。どういう内容だったんだ?
…あんた、タダで他人の世話焼くような奴には見えないんだけど」
『ふふ』
満了の条件を思い返して、緩く首を傾けて笑う。
相手にとっては大きな事になるだろうが、自分にとってみれば、満了したとて何も変わらない。むしろ、ずっと欲しかったものが手に入ることになるので、何ら不安に感じることなど無いのだけれど。目元にかけていた手を外して肩に置くと、閉じられていた目が開いた。僅かに赤みがかった青が、困ったようにこちらを見る。
「笑ってごまかすなよ…」
『いずれ嫌でも思い出すさ。どちらにせよ、変わらない。
何も気にしなくていい。不安なことなど何もない』
不安、と、僅かに開いた唇が、音を出さずに言葉を反駁する。
『ならば、少しだけ復習しよう。忘れてしまったお前のためにも。
――私は、お前を置いて何処かへ行く事は無い。絶対にだ。
お前が求めても得られなかったものが、いつか満たされる日まで』
ゆっくりと、膝から頭が離れた。
肩にかけていた手を下ろし、身を起こして隣に腰掛け、首を僅かに傾げる様子に目を遣る。
「やっぱり、タダでっていう風には思えないな。何か、その対価――代償になるものがあるんだろ?」
覗き込む顔には曖昧に笑みを返す。
けれども真剣に問われれば、目線を一度外して、――暫しの後、再び覗き込む顔へと目線を戻し、あわせて手を伸ばす。首へ回しかけて、強く引いた。傾いた背を抵抗ごと抱え込む。薄く浮かんだ愉悦の笑みをそのままに、耳の上へ口を押し当て、目を伏せて。
『お前がこの先幾つも見るであろう、甘い夢や哀しい夢――胸の奥を抉り突き刺さったままの悪夢とか』
ぐ、と抱いた腕を胸に押し当てて、静かに囁く。
「……あんた、なんなんだ?」
返ってきたのは、少し硬い、問いの音。
その問いに笑みを含んだ吐息を返してから、身を離す。すぐに、当惑を孕んだ視線がこちらを見据えた。
『――私はただの、パードレだ。お前が名付けた、ただの銃、ただの男だよ』
――それを、忘れさせないでくれる間は。
手を伸ばすと、僅かにその身が跳ねた。小さく笑みを零して、少し癖がついてしまった金糸へと構わずに伸ばす。
指をいくらか潜らせて、暫しの無言の時間が過ぎる。
「…わかった。…解らないけど、納得することにする」
『そうか』
緩く振れた首に、髪を弄んでいた手を下ろす。
困ったような顔が、一度こちらを見て、目線を伏せた。
「…疲れた。寝る」
『おやすみ。良い夢を』
こくりと首だけ頷いて。ソファにかけられていた体重が一人分、減る。
反対側に置かれたままの赤い表紙を再び手にして、しおり代わりの赤い紐をとく。
ぱらりと――照明の落ちた部屋に、頁を手繰る音が、静かに響いた。

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